❶血液透析の目的
〜血液透析をしておけば大丈夫?〜

血液透析を行なわれている方は「肝機能の低下」がみられる方です。肝臓は体の中の老廃物を尿と一緒に体外へ排出する働きを持つ臓器です。肝機能が低下すると老廃物の除去ができなくなり尿毒症という症状が出てきます。頭痛、吐き気、倦怠感、動悸・・・症状は多岐に渡り、透析を行なわないと2週間〜数ヶ月で死に至ってしまいます。
血液透析は体内の血液をダイアライザーという機械に送り、老廃物を取り除いた後に体内に戻す治療です。
週3回、1回4時間くらいの時間をかけて透析を行うことで健常な人と変わらない生活ができます・・・
と、このような説明を病院で受けている方がほとんどではないでしょうか?
しかし、肝臓は血液の浄化だけでなく、身体の維持に必要な血圧の調整、ミネラルの調整、血液内の血球成分の調整も行なっています。また、透析をおこなっているが故のQOLの低下や問題点、気を付けなくてはいけない病気なども存在します。
当店では「病院治療では手が届きにくいポイント」に焦点を当て、患者様のQOL改善や健康維持の情報発信、ご相談受付を行っています。

❷シャントの劣化は避けられない?

血液透析を受けるためには150〜200ml/分の大量の血液の出入りが必要です。静脈ではその量が確保できないこと、動脈では体の深部を流れているために穿刺できない、止血できない、という理由で利き腕ではない手首〜前腕に「シャント」と呼ばれる血管を人工的に作成します。動脈と静脈を繋ぎ合わせる手術を行い、血液透析を行う準備に入ります。
血液透析の場合、シャントに対して穿刺を行い血液の出し入れをするのですが、人の体に本来存在しない血管を作る、不自然な血液の動きをさせる、圧力がかかる、週3回の穿刺をこの後何年にもわたって行うことになる、等の理由でシャントは劣化してきます。また、シャントを作成することで血流が悪くなり手の末梢が冷たく痺れてくるというスチール症候群という症状が出ることがあります。
シャントの寿命は3年〜10年持つ方が多い一方、個人差があり、1年持たない人も20年以上持つ人もいます。
シャント劣化の多い原因は血管の劣化、血栓による閉塞です。血管状態自体をできるだけ健康に保つという必要があります。
シャント部分を清潔に保ち、感染に気を付けることや圧迫しない(シャント部分で血圧を測らない、体の下にして寝ない等)は病院から説明されていると思いますが、並行して「血流を保つ」、「血管を強くする」ということも並行して必要であると考えています。

❸透析時間は週3回、1回4時間でホントに足りている?

週3回、1回4時間の血液透析でGFR換算で10ml/分に相当するそうです。健常な方のGFRは90ml/分くらいありますので血液透析を週3回、1回4時間行ったとしても腎臓の機能代替としてはミニマムの量しかできていないという認識が必要です。血液透析を行っている患者様は自分の腎臓の機能(10〜20のチカラ)と人工透析(10のチカラ)で生命を維持していると考えていただければよいと思います。以上の理由もあり、透析時間は長ければ長い方が良いという事が分かっています。
理想は24時間、365日の血液透析を行うことですが、実際のところ長時間の拘束を望む人はいないでしょう。
透析は患者もスタッフも短い方が好ましいことは言うまでもありません。実際に血流量を上げて高効率にして短時間という透析方法が試されたこともありますが患者の負担が大きい(透析中の体調変化が増えた)、予後が悪いという事で4時間が基準となっています。
週3回で行なわれていることが多いのには別の理由もあります。透析施設やベッド、機材を効率よく回転させるためです。また、4時間以上の透析は時間に比べて保険点数が低く、1日のスケジュールを組みにくくなるからです。
透析治療を行っている患者様でも腎臓の負担を減らす、残された腎機能を維持するという事は大切な考え方になります。腎臓の負担を減らすには肝機能や免疫機能の維持が必要です。肝機能や免疫機能は日々の生活の中で体内から生まれたゴミを掃除することで腎臓への負担を減らすことができるといわれています。

❹透析による合併症
(透析をしていても気にしなければいけない事)

1.貧血

腎臓はエリスロポエチンという赤血球を作るホルモンを生産している臓器です。血液透析を行っている患者様は腎機能の低下によりエリスロポエチンの生産量も落ちていることが多々あります。明らかに透析時や透析後に貧血が起こるようであればエリスロポエチンを透析血液中に添加して体内に戻し赤血球の産生増強を試みます。
透析後も血圧が安定しない患者様が多く、これらの症状により貧血、酷いときは気絶してしまうことがあります。命に関わることですので生活養生の上でも貧血の対策が必要になります。

2.透析アミロイド症

ダイアライザーではB2ミクログロブリンという不要なタンパク質の除去が難しいです(ダイアライザーの性能にもよります)。このタンパク質はアミロイドという物質に変化し、全身の骨や関節、内臓に付着します。結果、関節が曲げにくくなる、痛む、痺れる等の症状が出てきます。アミロイドは体内のマクロファージで処理されることもわかっているので免疫力を底上げすることで症状の緩和と発症の予防に対応いたします。

3.悪性腫瘍(がん)

血液透析を行っている人は「がん」の発症率が高いです。透析患者において悪性腫瘍が多い原因ははっきりわかりませんが可能性としては、慢性炎症、免疫力の低下、発癌性物質の蓄積などが考えられています。
がんになると手術、放射線、抗がん剤などが検討されますが血液透析を行っている患者は免疫力の低下や血流が悪い事が多く、手術や放射線の予後が悪いことが分かっています。また、抗がん剤は腎臓に負担をかけるものが多く、使用できない抗がん剤が出てきます。以上の理由によりがん治療に大きな制限がかかってしまいます。第一に免疫機能、抗酸化機能、抗炎症を考え予防に努めると共にがんが確認されている患者様には腎臓を保護しつつ、がん治療を行うべく保管代替医療を提案していきます。

4.高血圧 むくみ 肺水症

血液透析を行っている方はドライウエイト等の説明も受け、水分制限や体重制限を指導されている方がほとんどではないでしょうか。血液透析を行っているという事は水分を排出する臓器である腎臓が弱っていることですので自然と体に水分が溜まりやすくなってしまいます(むくみ)。血中の水分量が多くなると高血圧になり、相対的に赤血球が減ると貧血状態にもつながります。体内の水分量が多すぎるとむくみが臓器にも回り、肺に水が溜まって息苦しくなるという事にもなります。
当然、日々の生活の水分制限は必要ですが、一方で体内の水分の巡りを良くさせることも役立ちます。透析を行っていても残存尿量をしっかり維持する、尿を出すという事は体調の改善や重大な疾患や症状の予防に役立ちます。

5.動脈硬化

透析者の死因、第2位は心不全です(1位は感染症、3位はがん)。透析者に心不全が多い理由の一つは高血圧状態による心臓へ常に負担がかかっているという事、もう一つの原因に動脈硬化による虚血性心疾患が多発することです。透析に至る人は何かしらの理由により血管へのダメージが蓄積されていて毛細血管が多い腎臓にその症状が出始めたという状態です。血液透析は血管を補修するような治療ではありませんので、血管の補修と共に血栓の原因となるようなコレステロール値の改善を意識した生活養生、サプリメント等を利用して動脈硬化の予防に努めます。

6.感染症

感染症の中でも多いのが肺炎と敗血症です。透析者はもともと健常人よりも免疫力が弱いうえ、透析患者の高齢化や透析の都合上、院内感染MRSAという抗生物質耐性菌の危険にさらされることが多くなります。
生活上では肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチンなどワクチンの利用と共に、まめな手洗いうがい、マスクなどの着用が有効です。当店では免疫力の低下を抑えるための養生や健康食品を予防的に使用いたします。

❺透析患者が気を付けなくてはいけない身近な薬
(NSAIDs)

ちょっとした頭痛や生理痛にイブプロフェンやロキソニン等を使用したことのある経験のある方は多いと思います。頭痛、生理痛は主にプロスタグランジンという炎症、痛み、熱を発生させるホルモンの作用によるもので、イブプロフェンやロキソニンに代表されるNSAIDsと言われる薬はプロスタグランジンの発生を抑え、炎症や痛みを取るという作用機序です。しかし、プロスタグランジンは腎臓の血流を上げるという作用もある物質で、透析者がNSAIDsを使用するとさらに腎機能障害を起こしてしまいます。
NSAIDsには含まれないアセトアミノフェンという薬も同様にプロスタグランジンを抑えますが効果が弱いという欠点があります。
透析者が解熱鎮痛剤を欲した時は、アセトアミノフェンから使用し、効果不十分であればNSAIDsを出されると思いますが連用しない事、腎臓機能障害の危険因子となること、脱水にならないように水分摂取を促すこと等を説明されると思います。
当店では腎機能に負担のかからない解熱効果のある漢方やサプリメントを組み合わせて、痛みや炎症に対して対応をしていきます。

❻「血液透析になった原因」も考える

透析に至った経緯は腎機能が30%や15%等に落ちてしまった事が原因であると思います。腎機能が落ちる原因として糖尿病、IgA腎症、嚢胞腎等が多いです。腎臓機能を低下させた原因の病気のケアも行っていくことが透析時間をこれ以上長くしない、体調を維持するという面では大切です。
上記3つの注意点と必要なケアを記してみたいと思います。

糖尿病について

糖尿病の判定には血液検査でHbA1C(ヘモグロビンエーワンシー)という指標を使いますが透析患者の血液検査では血糖コントロールの状態をGA(グリコアルブミン)で測定すること多いです。HbA1Cは糖化したヘモグロビン(赤血球)の割合で過去1〜2ヶ月の血糖値の状態を表します。HbA1Cの正常範囲は4.6〜6.2%。6.5%以上で糖尿病と診断されます。
GAは糖化したアルブミン(体内タンパク質)の割合を示し、HbA1Cの3倍程度の数値が出ます。GAは過去2週間くらいの血糖値の状態を表します。透析患者ではHbA1CではなくGAを使用するあたりから、より、細かい血糖コントロールが必要とされているという事が分かると思います。食事療法、食事制限、適度な運動による血糖コントロールは継続が必要です。また、血糖コントロールが悪いと血液内の糖質により細かい血管に炎症を起こし、血流が悪くなってしまいます。
腎臓は細かい血管が張り巡らされている臓器であり、腎機能を少しでも維持するためには血糖コントロールと血流改善が必要です。
また、糖尿病を患っている方は体内の免疫状態も低下している状態なので感染症に人一倍、気を付けなくてはいけません。血糖コントロール、血流改善、免疫賦活、抗炎症に対して漢方薬や医薬品、サプリメント等を組み合わせることをお勧めします。

lgA腎症について

lgA腎症は腎臓の糸球体に免疫グロブリンのlgAという蛋白が沈着する病気です。lgAが炎症の原因物質となり、腎臓の糸球体を傷つけ、血尿やタンパク尿をはじめとする症状より発見されることが多いです。免疫物質であるlgAが何故、異常に作られてしまうのかについては原因不明なところが多いですが感染症、自己免疫疾患、等が原因と考えられています(関節リウマチの患者さんが併発することが多いです)。
腎臓に炎症を起こした原因が免疫物質の「抗体」ですので病院治療では免疫制御剤等を使用して進行を遅らせる治療を行います。しかし、lgA腎症そのものを治療する方法は確立していません。ゆっくりと進行、最終的には腎不全を起こして透析が必要な段階になることが分かっています。
血液透析はlgA腎症の治療ではありませんので残された腎機能を少しでも維持するためには腎臓の炎症を抑える、過剰なlgAを抑えるという治療が必要になります。新たに感染症などに罹るとlgAが増えやすくなることもわかっているのでlgA腎症による腎不全を悪化させないためにも感染症の予防は必要です。
また、蛋白尿が出ている方は肝臓でのコレステロール生産量が上がってしまうため血中コレステロールや肝機能にも気を配る必要があります。
lgA腎症を発端として血液透析を行う患者さんには抗炎症、感染症予防、免疫調整、血中コレステロール、肝機能に対して漢方薬や医薬品、サプリメント等を組み合わせることをお勧めします。

多発性嚢胞腎

腎臓に嚢胞(水がたまった袋)がたくさんできて腎臓の働きが徐々に低下していく、遺伝性の病気です。根本的な治療薬は無く、肉眼的血尿、腹痛・腰背部痛、嚢胞感染、尿路結石、嚢胞出血などを予防することが大切になります。徐々に慢性腎不全が進行し5〜10年で50%が透析適用となってしまいます。
進行を遅らせる薬として腎臓の水分再吸収阻害剤(バソプレシン阻害剤)を処方されます。水分制限をすると腎臓の水分再吸収の働きが強くなり、嚢胞が大きくなるのが早くなります。水分をしっかりとって尿を出すことが多発性嚢胞腎ではよいとされています。ただし、腎機能が低下している方は水分を排出する機能が少なくてってしまっているので摂取した水分が多いとむくみや血圧上昇の原因となってしまいます。透析を始められている方は水分の制御せざるを得ないのが現実です。
多発性嚢胞腎を発端として血液透析を行う患者さんに必要なポイント:利水(水の巡りをよくする)、感染症予防対策として漢方薬や医薬品、サプリメント等を組み合わせることをお勧めします。

❼透析者には自殺が多い
〜透析者の「うつ」を考える〜

悲しい話ですが腎機能低下患者や透析患者では病気を苦にした自殺がしばしば見られます。透析を受けている患者では一般入口と比べて自殺のリスクが14.5倍という報告もあります。うつであると病院で診断され、向精神薬などが処方されることもありますが透析者では腎機能が低下しているので、必要以上に薬が効いてしまったり、薬自体で腎機能がさらに低下したりするという事があります。当店では透析者の悩みを聞くところから始め、うつ症状がある方に対しても睡眠の改善、ビタミン類、アミノ酸、ω3脂肪酸等を組み合わせて症状や気分の改善を図ります。

❽透析者への店主よりのメッセージ

私も日本全国に35万人いると言われている透析者の一人です。
病院から透析導入の話があった時はさぞかしショックを受けられたことと思います。しかしながら、透析を受けていても笑顔で長生きできる秘訣はあります。自身の免疫力を強化し感染症に気を付ける、血管や血液を正常に近づけて腎機能をこれ以上悪化させない。そうすれば暴飲暴食はできませんが「好きなものが食べられる」、激しい運動はできませんが「ゴルフを楽しむ」「ちょっとした旅行を楽しむ」なんてことはできるようになります。
けっこう充実した人生を送ることができるのではないでしょうか?
皆様が笑顔で暮らせるためのご相談を真摯に受けさせていただいています。
何かお困りの際、是非、当店に足を運ばれていただければと思います。