関節リウマチは女性ではよく見られる自己免疫疾患のうちの一つです。原因は自己抗体である事が多く、病院治療では免疫抑制剤を使用した治療が行われています。関節リウマチの痛みは病院治療で改善されることが多いですが、長期で薬を使用する必要がある病気です。長期の免疫抑制剤の使用で免疫力が大きく低下してしまうことや、今までは薬が効いていたのに効かなくなる、ということがあります。
これは病院治療では病気の原因の「免疫を正す」ということに対しては手立てが無いことが原因です。
関節リウマチの病院治療の方法とそれに加えていただきたい当店での関節リウマチへの対応の概念と書いてみたいと思います。

コトバの整理

・「自己免疫疾患」は自身の免疫の狂いにより、本来、異物や病原体を排除するチカラが自分自身の体に向いてしまい、炎症を起こし、熱や臓器不全、痛みなどを起こす病気の総称です。特定の臓器に対して自己免疫が働く「臓器特異的自己免疫疾患(バセドウ病、橋本病、シェーグレン症候群 etc.)」と「臓器非特異的自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、関節リウマチetc.)」に分けられます。

・正確には「リウマチ」は関節や筋肉、皮膚、血管が痛む病気の総称で全身性エリテマトーデスや強皮症、川崎病なども含む言葉です。どれも発熱や炎症、痛みがあります。その中でも「関節リウマチ」は関節の変形等を起こす病気を指し、一般的に「リウマチ」というと「関節リウマチ」の事を指されていることが多いです。

「膠原病」はコラーゲンに炎症が起こる病気です。結果として関節や皮膚が痛みます。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症は膠原病でもあります。

「関節リウマチ」は「リウマチ」であり「膠原病」でもあり「自己免疫疾患」でもあります。

①関節リウマチの症状

関節リウマチの患者さんが感じる痛みは、主に関節の腫れや関節が破壊されることによる痛みです。そのため、痛みのでやすい身体の場所は、指、足、ひじ、膝などの「関節」であるのが関節リウマチの特徴です。
最初は「朝、指が曲がらない」という事から気づくことが多いです。関節リウマチ初期では生活に大きな支障もないですし、少し動かしていたら良くなるので放っておかれる方がほとんどです。しかし、この症状が1週間くらい続く、なんとなく腫れているという事であれば関節リウマチを疑って病院で検査をお勧めします。関節リウマチは進行性で何かの拍子に加速的に病態が悪化、関節の変形が進むことがあります。
関節リウマチが続くと「痛み」が出てきます。「万力で締め付けられるような痛み」と表現することが多く、病態が進行してしまうと「安静にしてても痛い」「痛みで夜、寝れない」などひどく苦しめられることになります。

②関節リウマチの診断

血液検査

関節リウマチは典型的な自己免疫疾患で患者の自己抗体というものが血液中から検出されることが多いです(必ずではない)。関節リウマチを診断されている方は是非、ご自身の血液検査結果を見てみてください。

抗CCP抗抗

滑膜のあるシトルリン化タンパクというタンパク質に対する自己抗体で、関節リウマチの人の70~80%がこの抗体をもっているとされています。関節リウマチの確定診断によく使用されます。

リウマトイド因子

体の中の抗体に結合してしまう自己抗体です。関節リウマチだけでなく、エリテマトーデスやシェーグレン症候群、感染症のC型肝炎などでも上がることが分かっています。多くの自己免疫疾患で出てくることが分かっているため、これだけでは関節リウマチの判定には使えません。

IgG型リウマトイド因子

リウマトイド因子の中でもIgGという抗体に結合するもので、自己免疫疾患の中でも特に病態に関連が強いと言われているものです。

CRP

身体の中の炎症を示す数値です。自己免疫疾患の関節リウマチではなくても感染症に罹って正常に免疫が活性化しているときでも数値は上がります。
数値が高いときは熱、痛み、だるさなどが出てきます。

③関節リウマチの診断【診察】

関節リウマチが明らかに進んでくると痛みと共に指の変形などが出てきますのでご自身でも分かると思いますが、その前段階でも注意深くご自身の手を見ていただくと分かることもあります。下の写真はレイノー現象という症状で冷たい水に手を付けると手がしもやけのようになる、寒くなると手指がしびれる、紫色になる という現象です。

写真では指の先が紫色に変色しているのが分かります。
⑴痒みが少なく長く続く
⑵左右対称に出る
という特徴もあります。これは他の自己免疫疾患でも見られることがあり、自己免疫疾患の患者様の多くは冷えが根底にあり、血流が悪いという共通点があることを示しています。

その他、多くの診察やテストを行って「関節リウマチ」という診断名がつきます。関節に炎症を起こし変形を起こすという点で関節リウマチと似ている乾癬性関節炎や変形性関節症、更年期障害、骨粗しょう症等もあり、区別されます。
また、五十肩や肩こりと勘違いし軽く見ているうちに悪化する(手術が必要になる)こともあるので早めに病院治療をうけて症状の悪化を防ぐことも大切です。

④関節リウマチの病院治療

昔は生命を守るための治療でしたが、今では生活を守るための治療として病院治療が行われています。しかしながら、病院治療で関節リウマチは根治しないという考えがあるため、免疫を抑制することで症状を抑えることを目的としています。この寛解の状態を維持するために生涯にわたって治療薬の投与が必要になります。関節リウマチの薬は新しいものが次々と販売され、その組み合わせで使用されることが多いです。

メトトキサレート
(商品名:リウマトレックスカプセル、メトレート錠、メトトレキサート錠)

メトトキサレートはリウマチ治療に最もよく使用されている免疫抑制剤です。細胞増殖に必要な葉酸の代謝拮抗薬という点でステロイドとは別の作用機序で免疫を抑制します。
関節リウマチ患者の関節周りでは免疫が過剰に活性化し、増殖を行っていることから細胞増殖を抑制するこの薬が使用されます。

副作用
消化器症状(口内炎、嘔気、下痢など)、肝障害、腎障害、感染症、骨髄抑制(血球減少)、間質性肺炎、リンパ増殖性疾患etc.

カルシニューリン拮抗薬(シクロスポリン、タクロリムス)
(商品名:ネオーラル、プログラフ)

免疫細胞は自身の活動にカルシウムを必要とします。カルシウムを受け取って活性化するタンパク質(カルシニューリン)に結合することで免疫抑制効果を発揮します。

副作用
高血圧,腎障害,高血糖,高脂血症,神経症状(手足の しびれ・震えが多い)etc.

サラゾスルファピリジン
(商品名:サラゾピリン)

アスピリンに近い抗炎症剤です。T細胞やマクロファージにも作用して炎症を抑制することで抗リウマチ作用も示すことが分かっています。

副作用
肝臓 · AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇 ; 腎臓 · 浮腫、蛋白尿、BUN上昇、血尿、腫脹、糖尿、尿路結石 ; 皮膚, 脱毛 ; 消化器, 悪心・嘔吐、腹痛、口内炎、胃不快感、食欲不振etc.

ステロイド
(商品名:プレドニゾロン、プレドニンetc.)

昔から使われる強い抗炎症作用、免疫抑制作用のある薬です。関節リウマチの特効薬として使用された歴史もありますが大量投与、長期使用などによって多くの副作用があるために今ではできるだけステロイドを使用しない方向で治療を考えられることが多いです。

副作用
胃腸障害、肝障害、腎障害、肥満,高血圧,糖尿病,感染症,白内障、骨粗鬆症etc.

生物学的製剤 インフリキシマブ(商品名:レミケード)、
アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)、
トリシズマブ(商品名:アクテムラ)etc.

遺伝子組み換え技術を用いて細胞培養など生物学的技法によりつくられた薬剤のことです。
炎症作用を起こす免疫物質のTNFと呼ばれる物質やIL-6と呼ばれる物質に結合して働きを抑え込む抗体医薬や分子標的薬と呼ばれるものがあります。
肝臓や腎臓への影響はほとんどありませんが免疫を抑制するので感染症への注意が必要です。
薬の価格が高く医療費が高額になるのも問題となっています。

その他:JAK阻害剤、骨粗鬆症治療薬

白血球がサイトカインを受け取った後を阻害し免疫を抑制する薬(JAK阻害剤)やステロイドによる骨粗鬆症を改善するためにビスフォスフォネート製剤と呼ばれる薬が処方されることがあります。
免疫を抑制する薬に関しては感染症に気を付けないといけないことは同じです。
ビスフォスフォネート製剤は副作用で顎骨壊死を起こしやすいという報告があり、問題視されています。

手術

変形がひどくなった関節には手術が行われます。変形した関節は元に戻らないので骨膜切除術や人工股関節設置などの手術が必要になります。

⑤関節リウマチ患者の死因

関節リウマチの患者の死因の第1位は感染症です。関節リウマチ自体では医療科学の進歩、免疫抑制剤の発達により亡くなることが少なくなっているのですが治療の副作用による感染症で亡くなる確率が健康な人より大きく増えます。
関節リウマチの患者の多くは生涯にわたって免疫抑制剤を飲む必要が多く、高齢になり、免疫力が弱っても関節リウマチが治るわけではありません(自己免疫疾患が免疫の「過剰」ではなく「狂い」と言われる所以です)。
免疫力が低下していても免疫抑制剤を服用する必要があるので感染症に罹る可能性は必然的に高くなります。余命は一般の人より10年短く、健康寿命も10年短くなると言われています。
「関節リウマチの病院治療を行いつつ如何に感染症を防げるか」がその後のQOLを決定します。

⑥関節リウマチに対する当店の対応

冷え・血流の改善

自己免疫疾患に共通することですが、特に関節リウマチの患者様にはレイノー現象が高頻度で見られることより血液の流れが悪いことが根底にあることが分かります。漢方薬などを使用して根底にある冷えの改善、血流の改善を行います。

免疫の調整

関節リウマチに対する病院治療を見ていただければわかるように様々な医薬品が開発されています。しかし、そのほとんどが免疫を抑制する薬を使用することが理由で患者は免疫低下による感染症に気をつけないといけなくなります。免疫を調整するサプリメント等を使用して免疫調整を行い、感染症を防ぐとともに自己抗体の抑制を図ります。

食事指導・栄養補助

関節リウマチは自己の免疫が関節を攻撃することによって起こる病気です。病変部を見てみると骨の破壊と骨膜の増殖、血管新生が見られることが分かっています。
関節部分の保護をカルシウム製剤やEPA、サメ油等のサプリメント類を使用することで図ります。
関節リウマチの患者は食欲がなく、痛みにより運動不足となり筋肉量が低下していることも多々あります。関節部分の痛みを改善することにより、四肢を動かす運動ができるようになる。そして食欲の増加に繋げ、十分な栄養補給と運動ができるようになる、という生活習慣が正の螺旋を描くようにアドバイスをさせていただきます。

ストレスの緩和

関節リウマチに代表される自己免疫疾患の発症要因は「体質(遺伝)×感染症×ストレス×女性ホルモン(女性の場合)」で考えられています。「体質」や「女性ホルモン」は変えることは難しいですが「感染症を防ぐ」「ストレスを緩和する」という事は生活の中でできることが多々あります。
ストレスに関しては個人個人、事情がありますが「質の良い睡眠しっかりとる」という事が共通してストレスから体を守る基本になります。
「夜更かしを避ける」、「リラックスした時間を意識をもって設ける」、「頑張りすぎないようにする」等の事から始めてください。
必要な場合は質の良い睡眠の補助をするサプリメント等をお渡しします。

⑦関節リウマチでお悩みの患者様へ

自己免疫疾患は西洋医学的には「発病の原因が不明」という事になっています。事実、リウマチを発症するきっかけは感染症の事もあり、疲労やストレス、食事や医薬品の副作用等で起こることもあります。当店ではその原因も探るところから始めます。
病院治療と並行して治療することがほとんどです。薬の効きが悪い、痛みがある、感染症の予防がしたい、なんでもご相談ください。
お力になれることが多々あります。

⑧余談

関節リウマチと喫煙の関係性

関節リウマチも喫煙関連疾患であり、1日20本以上20年以上吸うと吸わない人と較べてリウマチ発症は約2倍に、40年以上吸うと約14倍にもなることが報告されています。
喫煙は血管を収縮し血流を悪く、冷えの原因となることより血流改善が必要な場合は禁煙が必要になります。

上の絵画はオーギュスト・ルノワールの作品ですが彼は晩年、関節リウマチに悩まされていたそうです。変形した手には筆を括り付け、絵画時に使用していた車いすの背もたれには床ずれ防止の加工がしてあったそうです。
彼はヘビースモーカーとしても知られており、変形した指で紙巻きたばこを作成する映像が残っています。
関節リウマチの治療や改善には禁煙は必須ですがルノワールにも禁煙を勧めるかは迷うところです。たばこの煙が創作意欲の源と主張されたら・・・